2021年度版 古城の四季と花だより

10月12日(火)

 寒露が過ぎ、朝晩の冷え込みが日に日に厳しくなるのを感じる一方で、台風一過で汗ばむような陽気が戻るなど、寒暖の差が大きく天気も不安定な日々が続いています。こんな天気が秋らしいといえば秋らしい……のかもしれません。

 館跡の木々はじわじわと秋、そして冬に向けて、葉を落としています。園路を埋める落ち葉やドングリは日ごとに増え、特に雨の後などは滑りやすくなっていますので、散策の際はお気を付けください。

 さて本日は、博物館のバックヤードからしか見れないところに咲いていた花をご紹介します。さる9月の半ばごろ、博物館の裏手でキンモクセイの花が咲きました。

9月17日の様子

 道を歩いている時にどこからともなくキンモクセイの香りがすると、ああ秋になったんだな、と実感します。当館でもキンモクセイが植えられており、6月に紹介した夏椿の木と生垣の向こう側で、オレンジ色の花を一斉に咲かせました。あいにく、この後は雨や台風続きの日々で、見える部分に咲いていた花は早々に散ってしまいましたが、10月はじめくらいまでは換気のために事務室の窓を開けたときなどに、風に乗って芳香がただよってきていました。

 博物館のバックヤード以外にも、堀の中や土塁の上、崖の付近など、館跡には一般の来跡者の立ち入りができない場所が多くあります。遺構の保護や安全の確保のため、立ち入り禁止のエリアに咲く花々は園路からそっと見守るか、花だよりでお楽しみください。

9月23日(木)

 日が落ちるのも早くなり、館跡の秋も日々深まりつつあります。

 秋の行楽といえば紅葉です。館跡にはカエデやモミジなどの樹木も多く自生しており、シーズンには紅葉を楽しむことができますが、こうした木々が色づきはじめる時期はもう少し先の模様です。かわりに現在の館跡のあちこちで、秋の花々が鮮やかに咲いています。

 秋の花のなかでも一際目を引くのは、ヒガンバナでしょう。曼殊沙華(まんじゅしゃげ)とも呼ばれ、まっすぐに伸びた茎の先に真っ赤な花つける様子は、どこか妖しい魅力に満ちています。ヒガンバナは美しい花ですが、地下の鱗茎に強い毒をもつ植物でもあります。かつては墓場や畔に多く植えられており、この球根の毒で墓や田畑を荒らすネズミやモグラといった小動物を遠ざけるために用いられたともいわれています。また、鱗茎は適切に処理することで薬として利用したり、毒を除去すれば非常時の救荒食にもなりました。

 館跡でも堀や土塁のかたわらに数輪が固まって咲いているのが散見されます。菅谷館跡は史跡として整備される以前は農地や共有林として利用されていたため、その頃に植えられたものが今も残っているのかもしれません。ススキが穂を出し始め、枯草もちらほらと見え始めた館跡の中でヒガンバナが赤く咲く光景は、どこか物寂しくも風情ある秋を感じさせます。

  

9月7日(火)

 いまひとつ天候に恵まれなかった8月が過ぎ、9月がやってまいりました。長雨も手伝って急に気温が低くなり、肌寒さを感じる日々が続くなか、本日は久々の晴れとなりました。
 季節と同じく、館跡も徐々に秋めいてきています。博物館前のスロープに落ち葉やドングリが落ちていることが多くなり、すでに黄色く色づき始めている木も見かけるようになりました。

  

  堀や土塁の草むらの中からは、秋の草花が顔をのぞかせています。ツリガネニンジンもそうした秋の草花のひとつです。淡い紫色をした小さい花を咲かせる植物で、日当たりがよく、定期的に刈り込みが入るような管理された草地によく見られます。8月の末頃から館跡北側の土塁斜面にちらほらと咲いていましたが、この日は土塁の下の方に咲いていました。カマキリの子どもがじっと止まっていましたが、集まってくる虫がいるのでしょうか。
 「ツリガネニンジン」の名は、「釣り鐘」のような形の花と、「チョウセンニンジン」に似た根の形からついた名前で、ニンジンではなくキキョウの仲間です。根が生薬として用いられるほか、春の若い芽は「トトキ」という名で山菜として食用にされます。山野や草原などにありふれた植物ですが、花が咲く前に草刈りで刈り取られてしまったり、草地が自体が減少していたりと、名前は知っていても花はあまり見慣れないという方もいるのではないでしょうか。

 館跡の草むらにはツリガネニンジンや、前回紹介したギボウシをはじめ、数々の小さな花が隠れるようにして咲いています。こうした足元の草花を探して回るのも、館跡散策の楽しみ方のひとつといえるでしょう。

8月23日(月)

 強い雨と低い気温に見舞われたお盆が過ぎ、菅谷館跡には再びセミの声と真夏の猛暑が戻ってきています。

 前回紹介したテッポウユリは、あれから館跡内へ続く砂利道脇や植え込みの中からも花が咲きはじめています。気温の変化や大雨にも負けず、ツタに巻き付かれても花を咲かせるなど、気品ある見た目に反した生命力の強さを感じさせます。

 このテッポウユリが咲く植え込みを抜けた木陰の水たまり付近では、ギボウシが一斉に咲いているのがご覧いただけます。

  

 草丈20㎝程度の小さな花のため、ヤマユリやテッポウユリのような華やかさはありませんが、キキョウの花を思わせる薄紫色の可愛らしい花が木陰の水たまりで静かに咲いている様子はいかにも涼しげで、一足早く秋が訪れたような風情があります。少し視線を上げれば、ヤマボウシの赤い実も付きはじめているのが目に入ります。夏が長いといわれることの多い昨今ですが、処暑を迎えたこの一角は実りの秋に近づきつつあるようです。

 館跡にお越しの際は、この秋の気配を先取りしてみてはいかがでしょうか。

8月12日(木)

 8月も10日が過ぎ、毎日のように厳しい暑さが続いています。館跡内でも、初夏までは聞こえていた様々な鳥のさえずりがなりをひそめ、かわりにセミの鳴き声が賑やかになっています。

 7月の終わりとともにヤマユリのシーズンも過ぎ、館跡は緑濃い季節を迎えています。夏の花といえばヒマワリや朝顔が代表的ですが、菅谷館跡はあまり人の手が入らない自然が残る史跡です。そのため、8月は花の少ない時期でもあります。とはいえ、まったく花が無いわけではありません。国道に面した敷地の端、歩道橋のすぐ近くではテッポウユリが咲いています。

 ヤマユリに比べると花がやや小ぶりで細長く、花弁には斑点が無く真っ白なのが特徴です。ヤマユリほどとはいかないまでも、テッポウユリにも芳香があるようですが、歩道から一段上がった植え込みの中から生えているうえに、茎の長さが1m程もあるので、香りを楽しむのは難しそうです。

 ”テッポウ”という少々物騒な和名がついていますが、英名では「イースターリリー」と呼ばれ、その名の通りキリスト教圏ではイースターの祭りの際に盛んに賞用されます。日本国内でも冠婚葬祭でよく用いられていますが、切り花でない状態の姿は、園芸に親しんでいなければあまり見かけないものなのでは。近くを通る際にでも、少し立ち止まって鑑賞してはいかがでしょうか。

7月14日(水)

 館跡内ではヤマユリが見頃を迎えており、見回りの際にカメラを持った来跡者と行き会うことも増えました。前回はたまに聞こえる程度だったセミの声も現在は絶えず鳴いており、館跡はすっかり夏といった風情です。
 しかし現在の関東はまだまだ梅雨の真っ最中。館跡の見回りと写真撮影のために外へ出たとたん、雨に見舞われて逃げ帰ることもしばしば。かといって雨上がりを狙って見回りに行くと、雨後の湿気と高い気温のダブルパンチで館跡を一周するころにはバテバテに。
 そこで今回は、雨も暑さも関係ない、博物館の中から鑑賞できる花を紹介します。

 

  ヤブミョウガの花とアブ

 先月に夏椿を紹介した展示室前のスロープでは、ヤブミョウガの花がひっそりと咲いています。ガラス窓のすぐ近くで咲いているので、細く伸びた茎に玉のような白い花が鈴なりになっている様子や、小さなアブや蜂が蜜を吸いに来る様子が間近でご覧いただけます。
 このヤブミョウガ、「ミョウガ」と名がついていますが、実はミョウガではなくツユクサの仲間で、葉がミョウガに似ていたためについた名前だそうです。
 花の可憐なヤブミョウガですが、秋になると濃い青紫色の丸い実をつけ、その様子もまた美しい植物です。展示室の前を通る際に、鑑賞してみてはいかがでしょう。

2021年7月8日(木)

 天気の良くない日が続いていますが、週のはじめ頃からセミの鳴き声が聞こえはじめるなど、館跡では夏の気配が日に日に濃くなりつつあります。夏の館跡内で咲く花は香りの強いものが多いようで、見回り中に甘い香りを感じることも増えました。周囲に誰もいないときなど、少しの間だけマスクを外し、香りを楽しんでみるのもいいかもしれません。

 夏の盛りを目前に、駐車場ではクチナシが、博物館の裏手ではネムノキが咲いています。クチナシはバラのようにも見える八重咲の白い花で、ネムノキは刷毛のような形が特徴的な淡い紅色の花です。どちらも香りがよく、館跡の入口付近の見に行きやすい場所にあります。

クチナシ  

 

 博物館の脇を通り過ぎた二ノ郭の土塁では、ヤマユリが続々と開花しつつあります。ヤマユリはあずまや付近の日陰がちな場所に多く分布していますが、実は日当たりのいい出桝形土塁にも、よく目を凝らすとピンク色の花が密生しているのがみえます。チダケサシという花で、モールのように密生した特徴ある花を咲かせます。園芸用によく育てられるアスチルベはこの花の仲間、あるいは改良品種だそうです。花は近くで見るときれいな薄ピンク色をしていますが、やはり野生種のせいかアスチルベに比べてフワフワ感に欠けており、咲いている場所も土塁の斜面なので近くで見るのはなかなか難しいのが残念なところです。

チダケサシの花

 

 最近、館跡内でスズメバチの目撃情報が相次いでいます。スズメバチの巣は木の根元などの土中や樹洞に多く、近づくと非常に危険です。園路以外への立ち入りは控えるよう、お願いいたします。

2021年7月3日(土)

 カレンダーが7月に突入し、本格的な夏が近づいてまいりました。雨がちな天気のせいで館跡内は蒸し暑く、土がむき出しになっている場所は滑りやすくなっています。5月頃から茎が伸びていたヤマユリですが、7月に入って最初の花が開花しました。開花情報などはヤマユリ日記2021をご覧ください。

 夏の館跡では、ヤマユリのほかにも様々な花が咲きます。先月紹介した夏椿の花は終わってしまいましたが、野外ではヤマユリに先駆けてヤブカンゾウやノカンゾウが見頃を迎えています。ノカンゾウは土塁の上など鑑賞しづらい場所に咲いていますが、ヤブカンゾウは国道に面した館跡東側に群生して咲いています。ぜひお近くでご鑑賞ください。

ヤブカンゾウの花  群生するヤブカンゾウ

 

2021年6月21日(月)

 早いもので、もう夏至になってしまいました。今日を境に昼の時間は短くなっていきますが、夏はこれからが本番。気温や日差しは日々厳しくなってまいります。館跡見学にお越しの際は、熱中症にくれぐれもお気を付けください。
 なお、自然の多い場所には虫もつきもの。館跡にはスズメバチやヘビ等の危険な生き物も生息しておりますので、そちらにもご注意を。

バックヤードから見える夏椿  展示室前の窓から見る夏椿

 一方で、この季節に日差しも暑さも関係なく楽しめる花もございます。展示室前のスロープから、窓越しに夏椿をご覧いただけます。
 シャラ、シャラノキなどとも呼ばれる花ですが、なんでも釈迦の入滅の際に白く枯れたという逸話で有名な沙羅樹とは別種の花で、間違えられて付けられた別名なんだとか。本物の沙羅樹には日本の気候は寒すぎて、温室でないと育たないそう。
 それはともかく、夏椿は今日もきれいに咲いています。展示室に入る前に少し立ち止まって、眺めてみるのはいかがでしょう。

2021年5月7日(金)

 桜もとうに散り、新緑の季節も過ぎて館跡の緑は日に日に濃さを増しています。初夏の気配が近づいてまいりました。
 天気のいい日は日向の園路を歩いていると汗ばむほどの陽気ですが、雑木林の小径はほどよく木漏れ日が差し込み、散策にちょうどよい頃合いとなっています。
 つつじは見頃をやや過ぎてしまいましたが、二ノ郭のあずまや付近など、まだまだきれいに咲いている場所がございます。

  

 

 南郭から本郭へ抜ける小径などの雑木林では、キンランやギンランが咲き始めています。また、ジュウニヒトエやシモツケも花を咲かせております。
 菅谷館跡の土塁からは、夏の開花を控えたヤマユリの茎が伸びてきています。今年のヤマユリは、例年よりもやや早く開花しそうな様子です。

キンラン  ギンラン

ジュウニヒトエ  シモツケ
 
 ※画像にカーソルを合わせると、花の名称が表示されます。